お子さんが学校を休んだ時、「何があったんだろう?」、「何が原因なのだろう?」、突然であればあるほど、いろんな疑問が思い浮かぶでしょう。
「早く何とかしてあげたい」、そんな思いからお子さんから話を聞こうと、一生懸命声をかけても、全然言葉が返ってこない。
いつの間にか、こちらの言葉もきつくなり…。
カウンセリングの中では、ご家族からこうしたお話をお聴きすることもたびたびあります。
話したいのに、話を聴きたいのに、いつの間にか言い合いになってしまっている。
そこで、今回は穏やかな会話の時間が少しでも増えるように、相手に伝える時のポイントをご紹介しますね。
「心理的リアクタンス」という言葉は聞いたことあるでしょうか?
これは、自分自身が何かを選択するという自由が、外部から脅かされたときに、その自由を取り戻そう、回復しようとする心の動きになります。
言われた内容が正論かどうかはあまり関係なく、自分の自由が脅かされたかどうかがポイントになります。
普段の会話の場面で考えてみると、例えばこんな言葉になるでしょう。
「~しなさい!」
「~しちゃだめ!」
「~するからね!」
お伝えした例のように、相手の自由を制限し、心理的リアクタンスを生じさせやすい言葉は、指示や命令などの強制力をもった言葉になります。
自分自身に置き換えてみても、「~しなさい」と言われると、心の中でムッとして反発する気持ちなど、たしかにストレスを感じるかもしれません。
例えば、宿題をなかなかやらないお子さんを見かねて、「早く宿題やりなさい!」と注意する場面。
返ってくる言葉は「うるさい」、「今やろうと思ってたのに」、「…(無視)」など、こんな場面は経験ないでしょうか。
こうしたやりとりも、心理的リアクタンスは影響を与えているでしょう。
「早く宿題やりなさい!」と命令されることで、自然に反発する気持ちが生まれてしまいます。
早く宿題を終わらせた方が自分自身にとっても良いこと、自分のことを思ってのことだとわかっていても、反発する気持ちは生まれてしまう。
間違ったことは言っていないのに、感情的には親子でぶつかってしまう状況です。
そうしたコミュニケーションを重ねていくと、いつしか話す言葉も機会も減っていってしまうかもしれません。
決して、相手を困らせようという意図はないからこそ、伝え方も工夫したいですね。
ここまで、親子の会話を題材にして、心理的リアクタンスの影響をお伝えしてきました。
このように改めて考えてみると、私たちは納得するのは気分がいいですが、説得されるのは好きではないことがわかりますよね。
そして、私たちは言われたことが正論かどうかよりも、感情の方を自分の行動、判断に反映させてしまいます。
だからこそ、少しでも穏やかにお互いコミュニケーションを取れるようにするためには、次のような伝え方も大切です。
「Iメッセージ」という言葉は聞いたことがあるでしょうか。
これは主語を「I(私)」にして、伝えるコミュニケーションの方法となります。
反対の言葉は「You(あなた)メッセージ」。
Youメッセージは、You(あなた)が主語になります。
ですので、「(あなたは)~しなさい」、「(あなたは)~してはだめ!」など、自然と心理的リアクタンスを起こすような声かけになりがちなのですね。
だからこそ、その反対の伝え方である、I(私)を主語にして伝えることが大切です。
例えば、こんな感じ。
「~してくれと、(私は)嬉しいな」
「~した方が、(私は)いいと思うんだけどどう?」
「忘れてないか(私は)心配なんだけど大丈夫?」
Youメッセージよりも、柔らかい印象になりませんか?
伝えたいことは同じですが、相手が受け取る印象が違ってきますよね。
落ち着いて受け取ることができれば、返ってくる言葉も落ち着いたものになっていくでしょう。
ただし、ここで注意しておきたいのが、これは相手に言うことを聞かせる方法ではないということ。
心理学では相手を思いのままに操るようなテクニックは存在しません。
エンターテイメントではそうした表現が用いられることはあるかもしれませんが、そうしたことは叶いません。
「Iメッセージ」を使うのは、あくまで穏やかに話し合いができるようにする伝え方です。
相手に言うことを聞かせるために、「Iメッセージ」を使えば、自分の思うとおりに動かない態度に不満を感じてしまうこともあるかもしれません。
そうなれば、また相手との関係は穏やかなものではなく、ぶつかってしまうことも出てくるでしょう。
相手と穏やかに話し合えるようになるために、参考にしてみてくださいね。