ぬいぐるみ病院 堀口こみち様インタビュー後編~自分の心が感じたことを大切に~

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堀口こみち

株式会社こころ 代表取締役
「がんばれぬいぐるみ!」を理念とし、ぬいぐるみを通して人の心によりそい、安心と癒しを届ける事業を行っている。
今回はその事業の一つである「ぬいぐるみ病院」について取材。
GOOD DESIGN AWARD 2018 BEST100受賞
その他にもテレビ、新聞など、様々なメディアからも取り上げられている。

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前編では、ぬいぐるみ病院を始められるまでについてお話いただきました。
後編では、堀口さん自身にもスポットライトを当ててお話をお聴きしていきます。

社会に対して抱いた違和感

お仕事を始められる経緯について、もう少しお聞きしたいのですが、
最初はぬいぐるみの販売もされていたとのことでご自身で始められたのでしょうか。

このお仕事の前は、医療機器の製造業で働いていました。
医療のお仕事でも、心の健康と体の健康が大事だと思いまして、
そこでぬいぐるみのお店を、前の会社で新規事業として立ち上げさせていただいたんです。

その時にぬいぐるみの販売店をすることになって、
そのままそのぬいぐるみ店を独立するような形で起業しました。

やっぱり働く中では、いろんな世の中の不条理な現実みたいなのを感じていたんです。

でも、そういう世の中ではないと信じたい気持ちもあり、
きれいな心や思いやりの気持ちでお仕事をする方がうまくいく世の中であってほしいと思ったのもあって起業しました。

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でも、そんな甘くなくて、倒産しかかりまして大変だったんですけど。
創業者って好きでやってるから、ダメで元々という感じでした。

それだったらなにか役に立てることはないかなと思って、
ぬいぐるみの病院をやってみようと思いました。

病院で治療を始められるエピソードや社会の不条理に対する思いなど、堀口さんの誠実さが伝わってきました

ありがとうございます。
ただ、未だに、わかっていないのもあるんですよ。
私自身、世の中はあまりわかってないです。
うまく立ち回ることができなくて、それなら自分でやってみようと思って起業しました。

思い返せば、学校教育とは少し離れた環境に

その違和感を感じることは私も含め、多くの人も共感できると思いました。
ただ、その違和感を実際に行動に移す力はすごいなと感じます。

私も自分の人生を振り返って思ったことは、
資本主義社会とか偏差値教育っていうのがあると思うんですけど、
もしかしたらあんまりそこに関わらずに子供の頃過ごしてきたのかなっていうのもあります。

周りもよく見てみたら、祖父もバトミントン工場とかね、5個ぐらい色んな事業をしてたんです。
あと父はキリスト教の教会の牧師をしてました。
他にも周りの親戚とかも色んな方がいました。

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母はけっこう性格が陽気なタイプでした。
ただ、祖父が沢山の事業を失敗したこともあり、お金がなくて借金に追われて、母は高校行けなかったそうです。

そのため、私が起業するとかだったらきっと止められると思ったんです。

けれど全然そんなことはなくて、応援してくれました。

その他は、私は学歴社会にはあまり関わらず育ってきたように思います。
偏差値とかで順番を決めたりするでしょ。
そしたら自分の限界みたいのが順番付けされるような感覚を持っています。
もしかしたら、そうした中では、知らず知らずに挑戦しにくくなったりするかなと思うんです。
私は大学も論文で入ったので、今思うと、学歴社会のような環境は私の周りにはなかったなあと思います。

偏差値や学歴などとは離れた環境で過ごしてこられたのですね。

だから限界があんまり分かってない感じがします。
準備体操せずに海に飛び込むタイプで、泳ぎながら分かっていくみたいなタイプだと思います。
日本の教育はきちんと準備体操をして泳ぎ方も練習してから飛び込むようにという感じが私はしていて、
私の場合は、とりあえずまず飛び込んでみよう、やってみようという感じでした。

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おっしゃるように、テストは100点満点で、そこから減点して何点取れるかというような仕組みが中心ですね。
ですので、最初から限界が決まっているような感覚もお話を聞いていて受けました。
一方で、論文などは満点も正解もないものですね。
100点満点で測れるもの以外の、自分らしさも大切にしたいですね。

行っても行かなくても大丈夫、という視点

不登校の方や学校に行かないと不安で、学校に行かないといけけないと思っている場合は、
私は、学校行かなくてもいいんじゃないかなって思っているところがあります。

私も学校がつらかった時期もありますし、
けれど行かなかったとしても進んでいく道はあるんですよね、なんとかなるというか。

学校に行って勉強して、いい高校いい大学に行っていい会社にっていうイメージが強い分、
そこから外れた時の怖さはあると思います。

もちろん子どもたちもご家族も戦ってるかなと思うので、
行っても行かなくてもいい発想も大切かなと思ったりもします。

もちろん、学校にもいいこともあると思っています。
友達ができてとか私も楽しかった思い出も学校でいっぱいありますし。

どちらでも大丈夫というのは大切な考え方ですね。
堀口さんの人生も相まって、とても説得力のあるお話でした。

次の世代の子どもたちにできること

ここまでは、堀口さんの過去についてお話をお聴きしてきました。
次は、今後していきたいことなどについてもお話を聴かせていただけますか?

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そうですね。もともとは命の存在としてぬいぐるみさんを治療したり、
ケアすることについて、特殊なことと思っていなかったんです。

けれども皆様から「それは特徴的だよ」っておっしゃっていただけますし、
大学の先生など、研究者の方からも、「日本の伝統的な心も詰まってる」と言っていただけます。

全てのものに命を感じるっていう日本の文化にもつながっていることなのであれば、
そういった日本の心をこれからの子どもたちにも伝えていることにもなるのかなと最近思っています。

たとえば、武道だったり神道だったり茶道などから、
子どもたちが日本の心を学ぼうとか言っても結構ハードルが高いと思うんです。

ですので、子どもの頃ってぬいぐるみと一緒に遊んだりというのもあったと思うんですけど、
そういうところから子どもたちにお伝えすることもできるのかなと思っています。

「ぬいぐるみを大切な存在として思う感覚ってあるよね」とか、
大人になってもぬいぐるみを持っていることが恥ずかしくてとかいう方もいるんですけど、
そうした方もすごく共感能力も高かったり、人の気持ちが理解できたり、
とっても繊細で優しかったりするんです。

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AIの時代になればなるほど、そういう感受性が豊かな方が人間らしくて才能があると思うんです。

それはわざわざ閉ざしてね、効率化効率化っていうよりも、
その心の豊かさというすごいものを持ってるんだってことがわかれば自信になるかなと思っています。

そういうことをぬいぐるみとのかかわりを通して、お伝えしていく活動ができたらいいかなと思っています。

次の世代の子どもたちに何か伝えられる活動をしていきたいなと思っています。

「すごい力を持っているんだよ」、「変なことではないんだよ」という言葉は、
多くの人を勇気づけたり、安心を感じてもらえる言葉だなあと思いました。
ありがとうございます。

自分の心に素直に生きること

最後に、ここまで記事をお読みいただいた方へメッセージをいただけますか

私自身も引っ込み思案で自分のことを発信することがずっとできなかったんです。
自分の心は自分のものではないような感覚が子供の頃からありました。

そして二十歳ぐらいの時にようやく自分の心は自分のものなんだってことに気がつきまして、
それからは自分の心を聞いてみたり自分の好きなことは何かなとか、自分の嫌なことは何かなとか
あとは自分のやりたいこととかを考えられるようになりました。

何かやらないといけないとかではなくて、自然と夢中になっていくものというのを
子供の頃からのことをちょっと思い出したりとかしながら何が本当にやりたいか、
心がワクワクするかなとか、落ち着くなあとかいう感覚を頭で考えて、過ごせるようになりました。

私も昔はそういう風に思えなかったことが多かったので、
そういうふうに自分の心が素直に感じとったものを大切にしてほしいと思います。

自分の心が素直に感じ取ったものを大切にすること、自信をもって自分の人生を生きるためにも大切な視点ですね。
本日はとても貴重なお話ありがとうございました。

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