ある日、子どもが学校を休んだ。
お腹が痛い、熱がある、頭が痛いなど、どこか体の調子が悪いわけでもありません。
この事実をどのように受け止めたらいいのか、当然、親も戸惑うことでしょう。
少し休んだら回復することもあるでしょう。
ただし、思ったようにはならず、休みが1日、2日と続くにつれて、少しずつ「不登校」という言葉が現実味を持ち始めます。
文科省の統計では、不登校は次のように定義されています。
何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席したもののうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの
引用:文部科学省「不登校の現状に関する認識」
具体的な数字として、「年間30日以上」という文言はありますが、それ以外に具体的なものはなく、それだけ多様なケースがあることを反映しているのだと思います。
実際、29日の欠席の子は問題を抱えておらず、30日以上は問題を抱えていると解釈する方が難しいですよね。
30日というのはあくまで統計をとるための基準であり、支援の際には子ども一人一人を理解する必要があるでしょう。
しかし、それゆえに「不登校の子」、「不登校の児童生徒」に何らかの特徴を見出そうとする心理も働くのかもしれません。
ご相談に来られるご家族だけではなく、テレビや新聞等、メディアの方々から取材をいただくときにも、こうしたご質問をいただきます。
学校を休んでいる子どもの特徴を知ることで、どのようなアプローチが効果的なのかを考えるためでもあるでしょう。
またその特徴を知ることで、どんな問題を子どもたちは抱えているのか、どんな問題が社会的に起きているのか、分かりやすく伝えることにもなるでしょう。
しかし、こうした質問に対して、「不登校の子の特徴は〇〇です」と簡潔にお答えするのはとても難しい。
というのも、そこには「不登校の子」と一括りには出来ないほど、いろんな背景、性格、価値観を持った子たちが存在します。
例えば、
- 学校という言葉を聞くだけでも胸が苦しくなる子
- これからどうしていこうかと未来について考え始めた子
- クラスに入ってみようかなと準備している子
- 学校以外の進路を考えている
1人1人違います。
そして、同じ子でも時間の経過とともに変わっていきます。
「学校を休んでいること」は同じでも、それ以外は一人一人、性格も事情も異なります。
当然、その子に合ったサポートも一人一人異なるでしょう。
そうしたときに「不登校の子」とひとくくりにして、考えるのは適切ではありません。
目の前にいるのは、「不登校の子」ではありません。
一言では、括ることのできない、世界にたった一人の存在です。
「どんなことに興味を持っているのだろう?」
「どんなことに心配を感じているのだろう?」
「どんな価値観を大切にしているのだろう?」
…
不登校という現象は、その子を説明する一部分であって、全部ではありません。
1人の人間として、理解をする意識を持つこと、このことがお子さんと関わる上で大切な意識となります。
目の前にいる、「その子」を理解すること、大切にしていきたいですね。