子どもたちと話をしていると、時折こんな言葉も子ども自身から出てきます。
「そろそろ学校に行ってみようかな」
自分でこれからのことを考え、踏み出す心の準備が整ったタイミング。
それでも、いきなりすべての授業に毎日出席し、課題も完璧にこなすことは、心身ともに負担も大きくなります。
ですので、目標までのステップを一つ一つ設定し、できるところから取り組む計画を立てていくことも多くあります。
・学校の制服に着替える
・できる課題をしてみる
・自宅から通学路のある地点まで行ってみる(自宅最寄り駅、学校最寄り駅など)
・校門まで行ってみる
・学校に入り、保健室等で過ごす
・一部授業に参加する
・出席する授業を増やす
・すべての授業に出席する
などなど。
お子さんによって、ステップの内容、組み合わせは様々です。
また、今回の投稿の主旨とは外れますが、こうしたステップは子ども自身が「行ってみよう」という意思がある場合に考えていくことが大切です。
本人の意思を変えるために、上記のようなステップを組んでも家族への反発が強くなってしまうため、注意が必要です。
「子どもの意思も確認した」
「取り組むステップも話し合って決めた」
それでも、当日になるとベッドから出てこずに、できなかったということもあるでしょう。
それだけ子どもも悩んでいることもわかりますが、家族としても受け止めるのがなかなか難しい場面です。
子どもとしても、やろうと決めていたことができなかった経験であり、自己評価も揺らぐ時間となります。
それだけに、子どもにとって、やろうと決めたステップを実際に取り組むことはとても緊張する、勇気のいる時間かもしれません。
例えば
「1限目の担任の国語の授業だけ参加して帰る」
こんな目標を立てて、実際に授業に参加できたとき、どんなことに注意をしたらよいのでしょうか。
久しぶりの登校で、他の生徒も嬉しいかもしれません。
本人も達成感を感じているかもしれません。
そして、子ども自身が、学校では模範的な生徒だったり、やさしい真面目な子ほど、クラスの中での振る舞いは問題ないように見えるかもしれません。
「よかった。全然元気そうじゃないか。」
そんな印象を周囲にも与えるかもしれません。
けれども、その「普通」な振る舞いは、決して普通ではなく、無理をしている可能性があります。
そんな時に起こりやすいトラブルは
「(元気そうだし)次の授業も出てみる?」
という先生、クラスメイトからの提案。相談の中でもたびたび話題になります。
この提案をする背景に、困らせようという悪意はありません。
せっかく来れたこの機会を活かしたい、むしろそんな善意も込められているでしょう。
相手の善意が伝わるからこそ、断りづらい状況です。
かといって、無理をして次の時間も頑張れば、当然負担も大きくなります。
そして、無理をしていることを周囲が気づかなければ、さらに「次の時間も…」となるかもしれません。
そうして家に帰宅すると、くたくたになっている。
当然、次チャレンジするハードルは上がってしまいます。
なぜなら、「次行ったときも、また予定よりも多くいることになるかも…。」と不安が増してしまうから。
誰も悪い人はいませんし、子ども自身も頑張っているからこそ、できれば避けたい展開ですよね。
また、次の授業に出ることを提案されたときに、自分で断れた場合はどうでしょうか。
こちらは予定通り帰ることはできるので、負担が多くなることはあまりないでしょう。
ただし、
「国語の授業に出ることができた!今日は頑張った!」と思って帰るのではなく、
「国語の授業には出れた。でも次の授業に誘われたけど出れなかった。」と思う子もいるかもしれません。
実際に支援をしていて感じることは、
具体的に何を達成できたかよりも、その達成したことを本人はどのように評価しているかの方が大切だということ。
同じ頑張りをしていたとしても、「頑張った!」と思っている子もいれば、「全然大したことない」と思っている子もいます。
勇気を出して踏み出したチャレンジだからこそ、達成感を持って締めくくれるような経験にしたいですね。
だからこそ、
決めた約束を守ること
というシンプルなことがとても大切です。
仮に、予定していた授業に出ることができ、余力があった状態で帰ったとしても、
それは「次はもう少し授業に出てみようかな」という子ども自身の意欲につながっていきます。
学校は、ある一日だけ全力を尽くす短距離走ではなく、継続的に取り組んでいく長距離走です。
約束が守られることは、子どもにとって、学校への安心感となります。
そして、その安心感は学校への信頼となり、次踏み出す一歩の心強い支えとなるでしょう。