子どもが学校を休みがちになったり、朝学校に登校することを嫌がるようになったりすると、
「学校に登校する意味はあるの?」、こんな言葉が出てくるかもしれません。
- 家でも勉強することはできる。
- 友達とはオンラインで遊ぶこともできる。
- 学校の授業は塾で全部習っている。
- 学校に行っても仲のいい子がいない。
など、いろんな理由が出てくるでしょう。
確かに、学校に行かなくてもできることは多くある時代となりました。
けれど中には、「それは違うのではないか?」、「甘えているのではないか?」、そう思う理由もあるかもしれません。
こうした場面、あなただったらどんな言葉を返すでしょうか?
子どもが話してきた理由に一つ一つ反論し、説得することもできるでしょう。
例えば、こんな風に。
- 家では勉強が分からないときに質問できないでしょ?
- 実際に会って、遊んだほうが楽しいよね?
- 実験とか、塾ではできない授業もあるでしょ?
- 新しい友達ができるかもしれない。
これらの理由がその通りかどうかは置いておいて、「学校に登校する意味はあるの?」という子どもからの質問に、「もちろん登校する意味はあるよ」と理由を加えて説得することもできるでしょう。
ただし、このような、大人にとっての正論を聞いて、
「そういうことだったのか!よし、明日から学校に行こう!」
と思う子はあまりいないでしょう。
なんとなく、感覚でわかる方もいるかもしれません。
しかし、質問にはきちんと答えているにもかかわらず、なぜうまく伝わらないのでしょう?
そもそも、子どもはなぜ「学校に行く意味」を聞いてきたのでしょうか。
もしお子さんが小学1年生など、入学したばかりであれば、「学校」という存在をまだ理解していないかもしれません。
けれども、これまで自然に学校に登校してきた子にとっては、何のために学校に行くのか、その理由は知識として知っている子は多いでしょう。
大人ほど、きっちりと答えられるわけでなくとも、「将来困らないようにするため」、「イイ学校に行くため」など、その子なりの答えは持っています。
だからこそ、おそらく「学校に行く意味が本当に分からない生徒」はあまり多くはいないでしょう。
もし、本当に行く意味が分からないのであれば、行く意味が分かることで、疑問はスッキリ解消されるでしょう。
スッキリ解消していないということは、
お子さんは学校に行く意味が分からなくて困っているわけではないかもしれません。
ではなぜ、「学校に登校する意味はあるの?」と子どもは聞いてきたのでしょう?
このとき、意識しておきたいことがアドラー心理学の目的論という考え方になります。
目的論とは、人間の行動を因果関係でとらえるのではなく、その行動の目的から理解をする考え方です。
つまり、「〇〇(原因)があったから、〇〇をした(結果)」のではなく、「叶えたい〇〇(目的)のために、〇〇をした(行動)」というものです。
私たち自身のことを冷静に振り返ってみると、ある出来事(原因)によって、自分自身がこれからとる行動(結果)が決定されているということは想像しにくいですよね。
いつでも、私たちは、これから自分がどうするかを選ぶことができます。
それでは何を基準にして行動を選ぶのかというと、「叶えたい目的」ということになります。
例えば、「体重が増えたから(原因)、ダイエットをする(結果)」のではなく、「痩せるために、健康になるために(目的)、ダイエットをする(行動)」という考え方です。
または、「勉強が分からないから(原因)、勉強をする(結果)」のではなく、「合格するために(目的)、勉強をする(行動)」ということもあるでしょう。
同じ行動であっても、その人によって目的は異なります。
だからこそ、その子の気持ちを理解するためには、その子がその行動をとる目的は何だろう?と考える視点が大切になります。
学校に行く意味を聞いてきた子どもの目的を考えるために、その子の背景を考えてみましょう。
もしかしたら、きっかけは「学校に行きたくない」と思ったのかもしれません。
けれど、「学校に行った方がいいことは理解している状態」で、「学校を休むこと」を選ぶのは自分が思っていることと、行動していることが一致しません。
この頭と体の不一致は、私たちにとっても気分がいいものではありません。
だからこそ、その不一致を解消するために、「学校に行く意味が無いこと」を確認し、「学校を休むこと」の罪悪感を無意識に減らそうとしたのかもしれません。
「学校に行きたくない」という自分の心を守るために。
そうした背景も踏まえて、改めて考えると、
「学校に登校する意味はあるの?」という質問に、正論で説得を試みることがうまく行かないことが理解できますよね?
子どもは、学校に行く意味を知りたいのではなく、行きたくない気持ちや休まざるを得ない状況を理解してほしいという目的があるのかもしれません。
ですので、この状況でこちらが正論を一生懸命伝え、説得をしたとしても、子どもの望みは叶うことはありません。
だからこそ、説得をすればするほど、次々に行かなくてもいい理由が子どもから出てくるかもしれません。
もしくは、理解してもらう望みを諦め、話すことをしなくなるかもしれません。
では子どもから質問されたときは、どんな言葉を返したらいいのでしょうか?
質問に至るまでの子どもの背景を考えると、そこには「学校に行きたくない気持ち」や「休まざるを得ないほどのつらさ」があります。
そして、そのつらさを理解してほしいという目的を持っているかもしれません。
だからこそ、そうしたときには、まず子どもの話を受け止めること、その子の目的に応えることが大切です。
「でも子どもの話を聞くことって全部言うことを聞くということ?」
もしかしたら、こんな疑問が浮かんだ人もいるかもしれません。
けれども、相手の話を聞くというかかわりについては、受け止めることと同意することは違います。
親は子どもの話した話に、すべて同意しなければならないということではありません。
あなたはあなたの考えがあって大丈夫。違っていても大丈夫です。
受け止めることは、「あなたの気持ち(考え)を私は理解したこと」を伝えること。
「学校に行く意味が分からなくなったんだね」
「学校に行くことを考えるのもつらいんだね」
など、まずは話してくれた内容を受け止めていきましょう。
それが目の前のお子さんの安心となり、心の支えとなります。
そして、受け止めてもらえたことで、じっくりとこれから先のことを考える心の余裕にもつながっていくでしょう。
私たちは質問をされると自然に答えようと、頭の中で考えたり、口に出したりと、反応しますよね。
こうしたことからも会話の主導権は、話し手ではなく、聞き手が握っていることも多くあります。
ですので私たちは質問をされると、ついつい答えたくなってしまいます。
けれど、その質問をしてきた背景に思いを巡らせると、その質問に答えることが唯一の正解ではなく、別の反応の方がお子さんの心にはぴったりくるかもしれません。
まずは受け止めること、大切にしてみてくださいね。