「子どもが学校を休んだ時、親はどうしたらいいですか?」
カウンセリングの中ではこうしたお話を親御さんからお聴きすることも多くあります。
初めてのことでどう対応したらいいかわからない、そんな心配な気持ちも伝わってきます。
そこで今回は、不登校の悩みと向き合ったとき、親御さんはどんな心持ちで向き合うことが大切なのかについてお話していきますね。
お子さんが学校を休み、その日が連続する中では、きっと多くの親御さんは「どうしたらいいのか?」とネットや本など様々な情報を探すでしょう。
そして、インターネット上には、こちらのサイトも含めて、実に多くの不登校に関する情報が紹介されています。
- 「親はどのように子どもにかかわったらよいのか」
- 「朝は起こした方がいいのか」
- 「勉強はさせた方がいいのか」
- 「無理やり行かせるのはだめなのか」
など、様々な疑問に関する回答もあるかもしれません。
こうした様々な情報には大切なことも含まれていますが、実際に完璧にやることができている親御さんはいるでしょうか?
カウンセリングで多くの親御さんのお話を聴く中で、インターネット上にある「親の正しいかかわり方」について完璧に実践されている方は少ないように感じています。
たしかに、ネットで紹介されている「親の正しいかかわり方」などを真剣に受け止め、日々関わろうとされている親御さんは多くいます。
一方で、一生懸命取り組もうとする親御さんほど、「やらなければならない」、「ちゃんとしないと」などと抱え込んでしまうことで、ストレスを感じることも増えてしまいます。
不登校の悩みと向き合い、お子さんの力になろうと一生懸命取り組む態度は、お子さんの心が回復するためのお家での環境づくりなどにもつながっていきます。
しかし、「やらなければならない」などと完璧を求めすぎてしまうと、期待したように変わらない状況、お子さんの姿に不満を感じてしまうこともあるでしょう。
あるいは、お子さんとのかかわりがうまくいかなかった時などは、親御さん自身が自分のことを責めてしまうこともあるかもしれません。
お子さんの力になるように、一生懸命になればなるほど、思うようにいかなかったときのストレスは強くなってしまいます。
そうして溜まっていったストレスは、ふとしたタイミングで親子の衝突を引き起こしてしまうかもしれません。
一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、親子で傷ついてしまう状況はお互いにとってつらい状況です。
誰が悪いわけではない状況にも関わらず、こうした悪循環が起きてしまうことはできれば避けていきたいものです。
実際、ネットなど紹介されている情報の中には、すぐに実践することが難しい考え方もあると感じています。
たとえば、「お子さんのありのままを受け入れましょう」という態度。
こちらの態度は、カウンセリングでいうところの受容というかかわりに近く、相手を否定せずに、自分の価値観にはよらずに、無条件で受け入れることを、親に求めています。
たしかに、苦しい悩みを抱えている状況、思うように動くことが難しい状況にある子どもにとっては、自分を受容してくれる存在がいることは心の拠り所、支えとなります。
しかし一方で、例えば受験勉強や競技スポーツなど、目標に向かって、今まで多くの時間を親子で一緒に取り組んできた場合などはどうでしょうか。
親御さんがそこにかけてきた思いが強ければ強いほど、その目標、挑戦をたとえ一時的であったとしても諦めるようなことには、気持ちがなかなか追い付かないかもしれません。
「親の正しいかかわり方」について、書いたり、伝えたりするのは簡単ですが、それを実践するのは簡単ではありません。
今までの親御さんからのかかわりには当然、その親御さんの大切にしたい価値観や思いが込められています。
関わり方を変えるという単なる方法論の話ではなく、自分自身が大切にしてきた価値観との整理が必要な場合もあるでしょう。
その整理するプロセスには親御さんにとっても時間が必要なときも当然あるでしょう。
だからこそ、「親の正しいかかわり方」について完璧にやることにこだわらないこと、というゆとりを持つことが大切です。
インターネットや本など、今の社会はたくさんの情報がすぐに手に入る時代です。
だからこそ、私たちの中には「あるべき理想の親」がすぐに生まれやすくなります。
けれど、私自身、こうした「あるべき理想の親」は果たして実在するのだろうか、と時折疑問に思うこともあります。
むしろ「あるべき理想の親」が出来上がることで、苦しむ親御さんもいるのだろうと考えています。
もちろん、専門家からの情報は悩みと上手に付き合うための大切なポイントが入っていますし、多くの場合、悩みを抱える人の助けになるでしょう。
けれども、その情報と自分との距離感は大切です。
完璧にやることを目指すのではなく、自分のできる範囲で、そのとき自分ができることを、このことを意識の片隅にでも持っておいてもらえたらと思います。