不登校お手紙問題?~クラスメイトからの連絡について考える~

不登校お手紙問題って何?

「不登校お手紙問題」
この聞きなれない単語をご存知の方はいるでしょうか。

これは、学校を休んでいる、不登校の状況にあるお子さんに対して、クラスメイトや先生からお手紙を送るというかかわりのことを指しています。

私が中学生の時にもありましたので、おそらく20年以上前からあるテーマの一つです。

しかし、この内容を知って、「え?何がおかしいの?」と感じる方も多いかもしれません。

実際、休んでいるお子さんに対して、クラスメイトがその子を元気づけるために、「みんな待ってるよ!」など、前向きな思いでメッセージを送ることなので、もちろん誰も悪気はありません。

先生も、良かれと思ってクラス全員の寄せ書きを作り、渡すことも実際にご相談の事例の中ではありました。

誰も悪意はなく、全員善意の気持ちから行われるかかわりになります。

お子さんに伝えるかどうかは慎重に

誰も悪気はないにもかかわらず、なぜ「問題」という単語がくっついてくるのでしょうか。

そこには、送った人たちの思いと、受け取ったお子さん自身の思いに大きな隔たりがあるからなんですね。

そして、送った人たちに悪意はないことも、問題をより重くしてしまう一つになります。

だからこそ、クラスメイトからのメッセージを、休んでいるお子さんに伝えることは非常に慎重にならなければいけません。

皆さんは、なぜ「問題」という単語がくっつくのか、なんとなく想像がつくでしょうか。

受け取ったお子さんがより傷ついてしまう可能性も

「不登校お手紙問題」というように、なぜ「問題」と名がつくのか、その理由は受け取ったお子さん自身が傷ついてしまう可能性があるからです。

例えば、クラスメイト、時に先生も、お子さん自身を勇気づけたくて、こうしたメッセージを送ります。

  • 「みんな待ってるよ!」
  • 「〇〇がいなくて寂しいよ」
  • 「何か嫌なことあったら言ってね!」
  • 「ちょっとだけでもおいでよ」
  • 「先生も待ってるね!」

こうしたメッセージには、お子さんを傷つけるような悪意はもちろんありません。

クラスメイトなりに、少しでもその子の力になりたくて、メッセージを一生懸命考えています。

しかしながら、このメッセージを受け取った子どもの気持ちはどのようになるでしょうか?

受け取ったときの子どもの気持ち

お子さん自身が、「そろそろ学校に行ってみようかな、でも中々きっかけが…」

こうした状況であれば、クラスメイトからのメッセージは心強い支えとなり、後押しにもなるかもしれません。

しかしながら、「今は学校のことを考えるだけでもつらい、行きたくない!」

こうした状況の場合はどうでしょうか。あまり良いものではないことは感覚的にお分かりになると思います。

少しだけ専門的な表現になりますが、心理学では、人間関係において相手をコントロールすることはできないとされています。

相手を外的にコントロールしようとすると、そこには必ず歪みが生じ、その歪みはどこかに問題として表れてしまいます。

ですので、「メッセージを伝えて、元気づけよう」というかかわりは、別の表現をすると「メッセージを伝えて、相手を学校に行く気にさせよう」という外的コントロールとなってしまい、その目的が成功することはありません。

反対に、次のような問題を引き起こしてしまうことも出てきます。

子ども同士の間に上下の関係が生まれてしまう

「不登校お手紙問題」の最も注意しなければいけない点としては、クラスメイトとお子さんとの関係に上下関係を作ってしまうことだと考えています。

本来は、対等な友達関係であり、学校に行っていても、休んでいても、その関係性は変わりません。

しかしながら、励ますメッセージを送ることで、「励ます人と励まされる人」、「助けようとする人と助けられる人」という上下のような関係性を持ち込んでしまいます。

「そろそろ動いてみようかな」と思う子にとっては、たしかに支えとなりますが、「動くこともつらい」と思う子にとっては、周りからの思いに応えられないという惨めな気持ちを抱いてしまう出来事にもなってしまいます。

さらに、送ってくれた子たちは善意の気持ちからなので、相手を責めることもできず、自分を責めてしまいます。

そうなってしまうと、以前は気兼ねなく話すことができていた友達とのやりとりも、どこかぎこちなくなったり、あるいは避けるようになってしまう可能性があります。

誰も悪意がないからこそ、取り扱いは慎重に

ここまでお伝えしてきたように、学校を休んでいるお子さんを心配し、何か自分たちにもできることはないかと考え、メッセージを送ろうとする子たちに、悪意はもちろんありません。

それはメッセージを受け取るお子さん自身もよく分かっているがゆえに、その思いに応えられないとき、余計に自分を責めてしまうことにつながります。

こうした周りからのアプローチは、お子さん自身が一歩踏み出そうとしているときの「後押し」として活用するのはとても大切です。

しかしながら、「行きたくない」と感じているお子さんの気持ちを変えるために、こうしたアプローチを取り入れることは、今回お伝えしてきたように、おススメしません。

誰もお子さんを傷つけようという意図はないからこそ、そのメッセージの取り扱いは慎重にしていきたいですね。

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