不登校を経験した子どもたちはその後どんな人生を歩むのでしょうか?
私たちカウンセラーは、ほとんどの場合、子ども、ご家族が悩みを抱えているときに関わることになります。
そして、ほとんどの場合、その悩みが解消されるとカウンセリングも終結を迎えます。
初めてお会いしたときは曇りがちな表情だった子ども、ご家族も、すっきりとした表情で最後の挨拶を交わします。
充実した時間を過ごしていることの嬉しさを共有し、この経験がその子の支えになることを願って送り出します。
そのあと、どんな人生を歩んでいるのかは当然ですが知る由もありません。
それでも、時には子どもやご家族から近況の連絡が届くこともあります。
「〇〇部に入りました!」
「〇〇に合格しました!」
「今は〇〇の仕事をしています!」
「将来、〇〇の仕事に就けるように頑張っています!」
「安心して、任せられるようになりました。」
「最近頼もしくなり、いろいろと家のことも手伝ってくれます。」
人生という長い時間の中で、カウンセリングでかかわる時間は限られたものですが、覚えていてくれたことに素直に嬉しく感じます。
そして中には、カウンセラーになることを目指す子も多かったり。
自分の心と向き合い、つらい時間もあったと思いますが、その経験が自分の人生を歩む原動力にもなっていく頼もしさを感じる瞬間です。
そして、わざわざメッセージや手紙を送ってくれた背景に思いを巡らせると、お子さん、親御さん、それぞれにとって何か大きな節目だったのだろうと感じます。
「今、こんな風に過ごしています!」というメッセージの裏には、「以前と変化している自分」、「成長している自分」を見せたかったのかもしれません。
つらかった当時の自分を知る人に、今の自分の姿を知ってもらうことで、自分の成長をより実感できるかもしれませんね。
実際に、学校を休んでいたころの様子を子どもと改めて振り返ると、
「いろんなことをたくさん考えることができた」
「一回立ち止まってゆっくりできたのはよかったかも」
「自分のやりたいことが見つけられた」
こんなふうに、当時の経験に意味を見出していることが伝わっています。
今を充実して過ごすことができているからこそ、過去の経験にも意味を見出すことができているのかもしれません。
「あの経験があったからこそ、今の自分がいる」
心理学では、完璧な過去はないといわれています。
その人の、その時の心の状態によって、振り返った過去の印象は大きく変わります。
充実した時間を過ごしているからこそ、当時はつらかった過去の出来事されも、今の自分を支えてくれる大切な経験になっているのかもしれません。
不登校という状況は未来に対して不安な気持ちを与えます。
そして、多くのお子さん、ご家族にとって、不登校という状況と直面するのは初めてであり、その不安はより大きいかもしれません。
自分がどんな未来を過ごすのかは誰にもわかりません。
ましてや自分以外の他者であればより分からないでしょう。
私たちカウンセラーも同じように未来が分かるわけではありません。
それでもカウンセリングが終結したあとに、時折届くこうしたメッセージからは、「たとえ困難な状況を経験したとしても、未来の可能性が無くなるわけではない」という勇気を私たちももらっています。
すべての経験に意味はあります。
そう、感じることができるように、今できることをできる範囲で一つ一つ向き合っていきたいですね。