将来の進路を考える~仕事を知ることの大切さ~

「将来やりたいことなんてないし」

カウンセリングをしている中で、時折こうした言葉も子どもたちからは聞こえてきます。

将来の何かやりたいことは何かを考えて、そのために今できる努力をする。

このように物事を逆算して考え、目標を立てていく考えを大切にする人からすると、
そもそも「将来やりたいことがない」と話す子へのかかわりに困ってしまう方も多いようです。

それでも、親御さんのお話をお聴きしていると、

  • 将来やりたいことを見つけてほしい。
  • 自立してほしい。
  • 自分の納得いく人生を歩んでほしい。

多くの親御さんがお子さんの将来に対して、こうした願いを持っています。

それでは、「将来やりたいことがない」と話すお子さんと、将来のことについてどのようにかかわっていったらよいのでしょうか。

自分の進路を考える上で大切なこと

今、子どもたちには、将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現するための力が求められています。

文部科学省HP 「キャリア教育」より

学校でも、こうした考えのもと、キャリア教育が進められています。
職業体験など、地域の職場に行った経験がある方もいるのではないでしょうか。

そして、キャリア教育を進めていく上で大切なテーマとして、例えば中学校では次のような内容が挙げられています。

肯定的自己理解と自己有用感の獲得

趣味・関心等に基づく職業観・勤労観の形成

進路計画の立案と暫定的選択

生き方や進路に関する現実的探索

文部科学省HP 「キャリア教育の手引き」より

自分自身の良いところに目を向けたり(肯定的自己理解)、自分は誰かの役に立てている感覚(自己有用感)など、自分の人生を生きる上で大切になりそうなテーマが入っていますね。

実際、カウンセリングでも自己理解や自己有用感というテーマは大切にしていますし、関心等に基づいた将来の職業について、話題になることもあります。

ただし、今関心がある職業もなく、また自己有用感も感じることができていないケースですと、次のようなアプローチも大切だと感じています。

まずは、世の中の職業を知ること

自分は誰かの役に立つことができているという自己有用感が感じられなかったり、
自信も持てない状態では、「将来どんな仕事をしたいの?」と聞いても、前向きな答えは返ってきません。

背景には、「自分がなれる職業なんてあるわけがない」という自己有用感の低さも関係しているかもしれません。

けれど、落ち着いて考えてみると「将来どんな仕事をしたいの?」と聞かれて、子どもが思い浮かべる仕事の種類、数はどれくらいのものなのでしょうか?

きっと、あなたと私とでも完全に一致することはないでしょう。

つまり、「自分がなれる職業なんてあるわけがない」という考えは、「自分が知っている職業の範囲内で」という条件付きのものとなります。

ですので、職業そのものをあまり知らなければ、その分選択肢も少なくなります。

では、どうしたらよいのでしょうか?

答えはシンプルで、職業をまずは知ってみること、です。

その際、面談でも意識しているのは、

「将来やりたい仕事を決めるために、職業について知ってみよう!」

ではなく

「やりたい仕事かどうかは一旦置いておいて、まずはどんな職業があるかだけ知ってみよう!」

ということ。

人は、大きな目標を掲げすぎると、最初の一歩を踏み出すことに不安を感じてしまいます。
そして、入ってくる職業の情報も「自分が将来つける仕事かどうか」という視点が入ってしまうため、
どうしても仕事への評価が厳しくなり、自己評価も低い状態では意欲も高まりません。

  • 「こんな職業があるんだ!」
  • 「この職業ってこういうことをするのか!」
  • 「この職業ってこんなに稼げるんだ!」

その仕事になれるかどうかは一旦置いておきましょう。

まずは、純粋に楽しみながら、職業について知っていきましょう。

職業を知らなければ、職業も選べない

例えば、初めて入ったランチのお店でも、メニューが分からなければ頼みようがありませんよね?
メニューという選択肢があるからこそ、私たちはその中から選ぶことができます。

自分の進路についても同じです。

自分自身を理解すること、自分は社会に貢献できている感覚を高めることも大切ですが、
そもそもの視点として、「職業をどれくらい知っているのか」ということも大切です。

  • youtuber
  • レゴマスタービルダー
  • ドローン操縦士
  • ヒヨコ鑑定士
  • 切手デザイナー
  • 探偵
  • ゴルフボールダイバー
  • 酪農ヘルパー

初めて聞く職業も多いのではないでしょうか。
他にも「名前は知っているけど、具体的に何をするかはわからない職業」も多くあるかもしれませんね。

自分は何がしたいのか、素敵な仕事と出会うために、まずは知ってみることから始めてみましょう。

そもそも仕事をあまり知らない状態で将来のことを考えるのと、たくさんの仕事を知った後で将来のことを考えるのでは、思い浮かぶイメージや気持ちも違ってくるかもしれませんね。

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