カウンセラーも意識している、子どもの話の聴き方

子どもの話をきちんと聴くことはできていますか?

お子さんが不登校の状態になったとき、たくさんの情報をネットや本で調べると思います。

そして、よく目にするアドバイスの一つに、「子どもの話をよく聴きましょう」というものがありますよね。

あなたもおそらく知っているかもしれません。

けれど、このアドバイス、言うのは簡単ですが実践するのは簡単ではありません。

  • 話を聞いていると、イライラしてきてしまう。
  • いつの間にか、ついつい言い合いになってしまう。
  • しまいには、「もういい!」と言われ、話が終わる。
  • そしてだんだん、親子の会話自体が減っていく。

このような経験をした人もいるのではないでしょうか?

お子さんの話を聞きたくて会話を始めたのにもかかわらず、いつの間にか会話が減っていくことは、望んでいることではありませんよね。

実際、この「話を聴く」というスキルは、カウンセラーにとっては必須のスキルです。
しかし、話を聞くこと自体は誰でもしたことはあるでしょう。

それでは、カウンセラーの「話を聴く(傾聴)」は、一般的な「聞く」とはどのような違いがあるのでしょうか。

今回は、その違いについて、実際にカウンセリングで意識していることも踏まえてご紹介しますね。

話を聴くことは、すべて同意することではない。

先ほど、「話を聞いていると、イライラしてきてしまう」という、聞くことの難しさをお伝えしました。

よく「話を聴く」というと、「話の聴き出し方」など、具体的な言い回しなどをイメージされるかもしれません。

もちろん、「質問」のスキルなどもあり、その表現方法も大切なのですが、そもそも「イライラしてきてしまう」ということは、具体的な表現方法以前に、話を聴く側の態度を誤解しているかもしれません。

その誤解とは、次のようなものです。

「話を聴くこと」=「相手の言うことを聞くこと」=「相手の考えに同意すること」

この意識で、相手の話を聞くと、相手の話を聞くことはまずうまく行きません。

それはなぜかというと、私たちが相手の話を聴こうと思うのは、多くの場合は相手のことが分からないからです。

相手のことが分かっていれば、わざわざ話を聞こうということもありませんよね。

わからないからこそ、知るために、話を聞くことが多いでしょう。

そうなると、当然、相手の考えと自分の考えは違う可能性があります。
むしろ、全く同じであることの方が珍しいかもしれません。

そうした土台がある中で、話を聴くことは始まりますが、「話を聴くこと」を「相手に同意すること」と考えていると、その会話はどのようなものになるか、なんとなく想像できますよね?

そう、話を聞く側にとっては、我慢の時間となります。

「自分の考えとは違っていても、相手の考えに同意しなければならない」

こうした考えで相手の話を聞き続けるのは難しいでしょう。

「相手の間違っているところを正したい」

そんな思いも出てくるかもしれません。

そしてその思いにつられて「イライラ」の感情が高まると、お子さんとの会話は望んだ方向からは離れてしまってしまいます。

「話を聴こう」という思いは何も間違っていないからこそ、こうした展開は避けていきたいですね。

では、「話を聴くこと」で特に大切にしたい意識はどのようなものがあるのでしょう?

大事なのは、「あなたの考えは理解した」が伝わること。

自分のためではなく、相手のために話を聴く目的は、相手が「自分のことを理解してもらえた」と感じることです。

気持ちが落ち込んでいたり、ストレスがかかっていたり、自信を失っているときには、「この状況をどうしたらいいか」は頭ではわかっていても、心がついてこない状況です。

そうしたときに、「この世界には自分のことを理解してくれている人がいる」という事実は、大きな勇気づけとなり、支えとなります。

そして、その事実を確かめるための具体的な方法が「話を聴くこと」になります。

話し手にとって、話し手自身が話す内容は、言ってみれば自分自身の分身です。

その分身である話の内容を否定せずに受け止めて理解してくれることは、
自分自身を受け止めて理解してもらえることになります。
その体験がその人の支えとなり、勇気となっていきます。

だからこそ、話を聴く人にとって大切なことは「私はあなたの考えを理解しましたよ」ということを相手に伝えることになります。

子どもと自分の考えは違っていても大丈夫。

そもそも、話を聴こうとする背景を考えると、相手と自分の考えはそもそも一致しないことの方が多いことをお伝えしました。

さらに、話を聴く上で大切なことは、「私はあなたの考えを理解したこと」を相手に伝えることもお話しましたね。

同意と理解は、違います。

あなたの考えと、お子さんの考えは違っていても大丈夫です。

「あなたはそう考えるんだね」と受け止めるだけで、自分の考えを改める必要はありません。

例えば、

  • 将来は宝くじを当てて、そのお金で暮らしていく
  • トップyoutuberになって、好きなことで稼いでいく
  • もう一生働かずに生活保護で暮らしていく

こうしたことをお子さんが仮に話したとき、「世の中そんな簡単なことではない」と諭したくなるかもしれません。

自分自身が経験したことなければ、心配な気持ちも大きいでしょう。

けれども、お伝えしたように、話を聴くときに大切なことは考えを正すのではなく、相手が「理解してもらえた」と感じることです。

ですので、

  • 「宝くじのお金で暮らそうと考えているのね」
  • 「youtuberになって、好きなことで稼いでいこうと考えているのね」
  • 「働かずに生活保護で暮らそうと考えているのね」

肯定的な評価も否定的な評価も、賛成も反対もする必要はありません。
まずは、そのように考えていることだけを聴く側は受け止めていきましょう。

その受け止めてもらえたという体験が安心感となり、さらなる気持ちや考えを話してくれるかもしれません。

  • でも、そんな簡単に当たらないことも知っている
  • 好きなことはあるんだけど、自信なくて
  • そんな楽な暮らしではないこともなんとなくわかっているんだけどね

など、ここには書き表せないほど、それぞれの子どもたちの答えが出てくると思います。

その時に出てくる迷いや前を向こうとする気持ちも大切に受け止めていきたいですね。

「あなたの考えは理解したよ」と伝えよう。

お伝えしたように、話を聴くことはこちらの態度が整っていれば、特別な知識や、専門的なアドバイスをする必要はありません。

将来のことについて、話を始めたときに、キャリアコンサルタントのような専門的な回答をする必要は全然ありません。

相手の考えを評価するのではなく、賛成も反対もするわけではなく、まずは「あなたの考えは理解したよ」ということを伝えていきましょう。

そのやりとりの積み重ねが、お子さんにとっては安心感となり、自信を取り戻すきっかけとなっていきます。

大切な自分の価値観と同じように、相手の価値観も大切にしよう。

私たちにとっても、自分自身の価値観が理解されないことはつらいことですよね。

ましてや、変わるよう説得されることも気分がいいものではないかもしれません。

一方で、自分のことを理解されることは安心できたり、嬉しいことだったりするでしょう。

自分の価値観を大切にするように、相手の価値観も大切に理解していくこと、意識してみてくださいね。

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