「『気にしすぎだよ』って言われるのでそうなのかもしれないんですけど…」
そう話しながら、自分の悩みを話し始めるお子さんに時折出会います。
「気にしすぎ」というアドバイスは、悩んで苦しい気持ちを軽くしようという善意の思いからですが、実際にはその悩むこと自体を否定してしまう言葉です。
アドバイスされた子にとっては、悩んで苦しいという実感と、悩むことすらもダメなことという板挟みとなり、相談することのハードルはますます上がってしまいます。
アドバイスをする方も悪気があるわけではもちろんありませんので、なかなかかみ合わないやり取りにはお互いにストレスをためるかもしれません。
「気にしすぎ」という個性とどうかかわったらいいのか。
今日はこの「気にしすぎ」という個性について考えていきたいと思います。
「気にしすぎだよ」というアドバイスを送る背景には、「気にしすぎ=短所、直すべき問題」という意識が私たちにはあるのかもしれません。
実際、気にしなくなれば、苦しさも無くなるでしょう。
しかし、先ほどお伝えしましたように、あるコトを気にしている人に対して、「気にしすぎだよ」というアドバイスは相手の悩みそのものを否定してしまうリスクがあります。
アドバイスというコミュニケーション自体が、そもそも相手の考えを否定するニュアンスがどうしても入ってしまうのでタイミングも難しいかもしれません。
そこで大切な視点として本日お伝えしたいのが、「気にしすぎ」を直すのではなく、「気にしすぎ」とバランスよく付き合うという視点です。
バランスよく付き合うというのは、長所と短所、どちらも理解していることになります。
ですので「気にしすぎ」は直すべき問題としてとらえていると、「気にしすぎ」の短所や欠点、良くないことばかりが目に付くかもしれません。
親御さんからすると、問題を直そうとかかわるあまり、時にお子さんと対立することもあるかもしれません。
お子さんからすると、自分の短所ばかりが目についている状況ではなかなか心に余裕は持てないでしょう。
どんな個性にも強みとなる場面もあれば、その強みゆえにストレスを感じる場面もあります。
だからこそ、自分の短所や弱みばかり気になってしまう時だからこそ、その長所にも目を向けていくことが大切です。
それでは一緒に気にしすぎの強みを考えていきましょう。
気にしすぎることのメリットってどんなものがありそうですか?
たとえば、クラスメイトや先生などから、自分がどのように思われているかを気にする子。
周りからすれば「周りの子はそんなにあなたのことを気にしていないよ」と言いたくなるかもしれません。
事実、そうかもしれませんがそれを伝えたところで、相手の気持ちが軽くなるわけではないことは先ほどお伝えしました。
それでは一体どんなメリット、長所がありそうでしょうか?
子どもたちと一緒に考えると、こんなふうに色んな意見が出てきます。
- 空気が読める!
- 地雷を踏まない!
- 相手が困っているときにすぐ気づける!
- 相手の気持ちがわかる!
- 相手から好かれるかも!
どれも気にしすぎることのメリットですね。
特に「相手の気持ちがわかる!」というように、気にしすぎることそのものをポジティブに受け止められる感性はとっても素敵だなあと思いました。
気にしすぎることは、仕事においても大いに活かせるだろうなと感じる機会もありました。
インターネット上で通信対戦をするゲームの話題を子どもが話していた時のことです。
「ネットで対戦すると、自分のプレイ時間の合計が相手にもわかる。『こんなたくさんやっているのに下手だな』と思われたら嫌だから通信対戦はしたくない」
とその子は話していました。
こちらのケースも「気にしすぎだよ」とアドバイスを送りたくなるかもしれません。
けれどそのように感じる子は実際にいて、そのように感じる子は通信対戦の敷居を高く感じてしまうでしょう。
たくさんの人にゲームで遊んでほしいゲームメーカーからすると、好ましくない状況かもしれません。
しかし、そうしたことを気にしない人にとっては、それが改善できるポイントだと気づかないかもしれません。
実際、「どういうアプデ(アップデート)が来たらいいかな?」と尋ねると、「合計プレイ時間の表示、非表示が選べるようにしてほしい」ということを話していました。
たしかにこれなら、プレイ時間を自慢したい人、気にしない人は表示にしたらいいですし、気にする人は非表示にしたらいいですよね。
選べることでより多くの人が楽しんでプレイできそうです。
ゲームの開発については私も全然詳しくありませんが、ゲーム開発の会議の一コマでありそうなやり取りでした。
ここまで、気にしすぎることのメリットについてお話をしてきました。
気にしすぎることで生まれる苦しみは確かに存在しますが、反対に気にしすぎることのメリットも存在しています。
ですので、気にしすぎることそのものが悪いことではなく、「気にしすぎ」とバランスよく付き合えなくなることが苦しさを大きくしてしまうのかもしれません。
大切なことはバランスよく付き合うこと。
今は「気にしすぎ」の短所が目についてしまう状況であっても、その子の人生においては、気にしすぎることで、自分が助かった、困難を乗り越えてきたという経験があるのかもしれません。
だから、今もその子に備わっているのかもしれません。
すべての個性には存在する理由があります。「気にしすぎ」のメリットにも目を向けて関わっていきたいですね。