「勇気づけ」とは、アドラー心理学で用いられる、相手へのかかわり方の名称です。
文字通り、相手を勇気づけるための技法なのですが、
「勇気」という多くの人が知っている言葉である分、
アドラー心理学での「勇気づけ」とは少し違う解釈の方もいるかもしれません。
そこで今回は、「勇気づけ」のかかわりについて、不登校というテーマも踏まえて解説していきますね。
「勇気」という言葉、皆さんも当然聞いたことはあると思います。
アンパンマンの作品の中でも扱われており、小さいころから触れる機会がありますよね。
そして、大事な価値観であることも、私たちは感覚的に理解できます。
だからこそ、そこにはきっと、それぞれの「勇気」の解釈が存在しています。
ですので、まずはアドラー心理学での「勇気」について理解を深めていきましょう。
➀チャレンジする力
②困難を克服できるものと受け止める視点
➂目標に向かって協力する姿勢
➀チャレンジする力
「久しぶりの登校」、「自分で進路を決める」、「授業に追いつくために勉強する」
子どもたちと関わる中で、チャレンジの機会は多くあります。
もちろん、チャレンジをしないことを否定的に捉えることには注意が必要ですが、
こうした機会にチャレンジしようとする気持ちは勇気の持つエネルギーによるものでしょう。
②困難を克服できるものと受け止める視点
たとえば、「授業が分からない」という悩みを抱えていた場合、
「授業が分からないから、行かない」と考えるのか、
「授業が分からないから、勉強しよう」と考えるのかは、
その子のその時の心の状態によるでしょう。
「勉強しよう」と考えられるときは、「悩みを解決できるもの」と
受け止めることができており、これも勇気の持つ力の一つと言えるでしょう。
➂目標に向かって協力する姿勢
勇気は一人で発揮するものではなく、一緒に発揮することもできます。
学校行事や習い事で、チームで目標に向かって協力したり、
家族として力を合わせて乗り切る場面もあるでしょう。
そうしたときに独りよがりになるのではなく、協力する姿勢も勇気の一部とされています。
いかがでしたでしょうか?
言われてみれば、「たしかに!」と思うことばかりですよね。
そして、
この勇気を、相手が発揮することを支えるかかわりが「勇気づけ」と言い、
アドラー心理学の中でも中心的なかかわりの一つになります。
では、勇気づけとはどのようなかかわりなのでしょうか。
具体的な言葉でいえば、次のようなものがあります。
➀「ありがとう」と感謝を伝える
②「夢中になれるものが見つかって私も嬉しい」と感情を共有する
➂「毎日こつこつ練習していたものね」と努力を労う
➀感謝の言葉
この言葉は「自分は誰かの役に立つことができるんだ」ということを実感するでしょう。
②感情を共有する
感情の共有は「世界には自分のことを理解してくれる人がいるんだ」と人とのつながりを再確認できるでしょう。
➂努力を労う
努力を労うことで、結果だけでなく、過程にも価値を見出す助けとなるでしょう。
これらの言葉は確かに大切なものですが、それ以上にどのような気持ち、態度でかかわるかということの方が大切だと感じています。
実際、ぶっきらぼうに「ありがとう」と言われても、全く伝わりませんよね。
人がコミュニケーションを図る際、どのような要素がどれくらい影響を与えるかを
明らかにした「メラビアンの法則」によると、
・声のトーンなど耳から伝わる「聴覚情報」は38%
・表情など目から伝わる「視覚情報」は55%
・実際に話した言葉から伝わる「言語情報」は7%
このように、何を話した言葉、文字の与える影響は7%しかありません。
言葉以上に、表情、態度は多くを語ります。
だからこそ、言葉を知るだけでなく、なぜその言葉が大切なのか
についても理解を深めていきましょう。
勇気づけのかかわりをする上で特に意識したいことはこちらです。
・相手への信頼、尊敬の気持ち
・相手へ共感
・加点主義
お子さんが学校を休んでいる不登校の状況だったとしても、それは人の優劣を表しているわけではありません。
「学校を休んでいる弱い子」のような誤った評価をするのではなく、1人の人間として、信頼し、尊敬を持ってかかわる意識が大切です。
そして、その意識は子どもにも伝わり、自分への信頼、そして自信につながっていくでしょう。
相手へ共感することは、言葉がけのところでもお伝えしましたが、自分と他者とのつながりを感じることにつながります。
それは「この世界には自分のことを理解してくれる人がいる」という自覚となり、「この世界に自分は存在していいんだ」という自己肯定感にもつながっていきます。
加点主義については、努力や工夫、挑戦した姿勢など、たとえ結果が伴わなかったとしても、ポジティブな点を見つけ、伝えようとする姿勢です。
結果だけをほめ続けてしまうと、人はいつしか「クリアできること」しかやらなくなります。
結果を出すことが良いことであり、結果を出せないことは良くないことだという価値観が強化されてしまいます。
人生では、やる前から結果が分かるものの方が少ないでしょう。
困難と向き合ったときにも、結果を出すことだけではなく、挑戦することにも意味があると感じられるよう、加点主義の姿勢は大切にしたいですよね。
ここまで、子どもへのかかわりというテーマで、勇気づけについてお伝えしてきました。
ただし、この勇気づけは、自分から自分にも行っていただきたいかかわりになります。
不登校は決して親のかかわり原因があるとは考えていませんが、多くの親御さんとお話する中で、
ご自身のかかわりを責めている方も多くいらっしゃいます。
不登校は弱さの象徴でもなく、何かの失敗でもありません。
自分の心を守るなど、何らかの目的があって、それを達成するための手段として、
不登校という行動をとらざるを得ないというものです。
子ども自身が自信をもって、それぞれの進路を考えられるように、
まずはあなた自身への勇気づけも大切にしてくださいね。
参考文献
アドラー心理学入門 岩井俊憲
面白くてよくわかる!アドラー心理学 星一郎
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え 岸見一郎 古賀史健