ある日のカウンセリングのこと。
今までも色んな子どもとあったやり取りが、この日も起きました。
「あのとき(休み始めたとき)は、けっこうきつかったなあと思います。」
そう、子どもが話しました。
「今もつらいんです」と現在進行形で語るのではなく、過去形で語っていました。
たとえ、家にいることは前と今とで同じでも、
その子の中では、何かが変わっていると感じる瞬間です。
「あのときと、今では何か違うんだね。」
そう、言葉を返します。
そう言われて、子どもも自分が以前の気持ちとは違うことに気づきます。
自分が一歩進んでいることに、気づく瞬間。
「今週はどうだった?」
そう尋ねても、「変わらない」とそっけなく返す子もいます。
でも、会話を重ねていくと先ほどのように変化は起きていることばかり。
もっと突き詰めていえば、今この瞬間に考えていることと、5分後に考えていることは全く同じではないでしょう。
人は絶えず変化していきます。
そう考えると、変化はときに起こるものではなく、常に起きているものなのだろうと思います。
つまり、変化があったかどうかという問いがそもそも違っていて、たえず起こっている変化に気づける目を持つことが大切なのだろうと。
でも、「変わらない」と答える子にとっては、変わらない時間の積み重ねをただひたすに過ごしている感覚なのかもしれません。
心を休めるために、再び動く力を蓄えるために。
変わらない時間の積み重ねでは、こうした目的を達成することは難しいでしょう。
変化に気づく視点を持つために、まず変化とは何か?を考えることが大切なのだろうと思います。
例えば、変化とは「学校に行けるようになることのみ」と考えれば、学校に行くこと以外の事柄はすべて意味を持たないでしょう。
実際に想像してみると、どんな状況なのでしょう?
子どもからすれば、行けるようになるまでは変化のない、意味のない時間を過ごしている感覚であり、そこには達成感などの成功体験を感じる機会はありません。
「学校に早く行かなければならない」
そんな焦りが行動の動機づけになってしまうかもしれません。
心に負担がかかり、休んだ経緯を考えれば、適切な流れではないことが分かるでしょう。
一方、親からしても、変化が感じられない日常の中では、将来への不安を感じつつも、穏やかにかかわり続けることは難しいでしょう。
子どものあるがままを受け入れるのは簡単ではありません。
その焦りは、子どもへの圧力となり、親子のコミュニケーションにも良い影響は与えないでしょう。
変化のハードルを上げてしまうと、お互いにとって、苦しい時間になりそうですよね。
「変化は常に起きている」
このように意識をして過ごすこと、そうした視点を持って過ごすことは、
自然に変化に気づくことができる助けとなるでしょう。
ただ、「何をもって変化とするか?」は人によって違います。
もし、子どもが変化の定義をとても狭いものにしているようなら、周りが気づきを促すサポートが大切になるでしょう。
「あなたは変化と感じていないかもしれないけど、私は変化していると感じているよ」
たとえ、行動は変わっていなくとも、考え、気持ちなどの内面の変化を大切にしていることを伝えていきたいですね。
そして、以前とは違う心の気づきは、次に踏み出す一歩の原動力となり、その見えない変化の積み重ねは、いずれ目に見える一歩の支えとなるでしょう。