今回は、オンラインフリースクールのSHINGAKU様(以下シンガク表記、敬称略)に取材をいたしました。
シンガクは、小学4年生から中学3年生の児童生徒を対象に、5科目の学習はもちろん、ゲームを活用した楽しく学べる授業、プログラミングなどのクリエイティブな活動にも取り組まれています。
オンラインフリースクールSHINGAKU
シンガクを運営している株式会社成基様は、関西圏で60年以上、学習塾などを運営されている総合教育機関です。
不登校という社会課題が大きく扱われる中、その課題解決に貢献するべく、今年2023年の5月にシンガクを開校されました。
HPのURL https://www.shingaku-fs.jp/
お問い合わせ 0120-578-380
そして今回は、シンガクに通う子どもたちへのかかわりや保護者の方々へのサポートなど、シンガクの教室運営すべてに関わっている村上先生にその魅力や思いなどをお話いただきました。
―本日はよろしくお願いします。
オンラインフリースクールのシンガクは今年2023年の5月に開校されたそうですが、開校に至るまでの背景や思いについて、お聞かせいただけますか?
私たちはもともと学習塾を中心にした活動をしています。
私自身も個別指導塾の教室長として最初は勤めていたんですけれども、その中でどこの教室にも2、3名は不登校の子がいました。
ただ学習塾では学習面でのサポートが中心であり、不登校の子どもたちのサポートがもっとできないだろうかと課題は抱えておりました。
そして、不登校の子どもたちに新しい学びの場を提供できないかということで今回オンラインフリースクールを開校いたしました。
その思いとしては、シンガクという名前にも込めています。
シンガクと聞くと、高校に進むとか、大学に進むという、「進む学び」の進学というのをイメージされることが多いですよね。
私たちのシンガクはその意味ではなくて、「新しい学びの場を提供する」という意味の造語から名前を付けさせていただきました。
先ほどの課題感でもお話しましたが、不登校ということ自体が問題ではないと考えています。
ただ、「学校に行かない」という選択をしたときに、他に学ぶ場所がないということが問題なのかなと私たちは感じています。
ですので、新しい学びの場だったり、新しい学びの機会というのは、すべての子どもたちに提供できるようにという思いを込めて今回開校をさせていただきました
―新しい学びの場所としての意味を込めてシンガクと名付けたのですね。
新しい学びという言葉もありましたが、どのような学び、活動をされているのでしょうか。
活動内容は「学校よりも学校らしく」をテーマにしています。
もちろん、学校での指導要領に沿った内容の授業も行っていますが、新しい学びをテーマに、学校ではちょっとやらないような表現の授業というのも取り入れたりしています。
授業内容は曜日によってバラバラなので、今回すべてをご説明するのが難しいのですが、朝は固定の時間割で個別に学習をする時間となります。
また、皆さん楽しんでやってくれるのがお昼からの時間になっていまして、火曜日、木曜日が一番人気なゲーム学習のお時間となっています。
子どもたちが好きなマインクラフト、フォートナイトなどを使いながらゲームをするんです。
けれども、そこにちょっと学習の要素を入れていまして、5教科のカリキュラムを作って今実施をしています。
ブロックでちょっと漢字を作ってみようだったり、マインクラフトでは元素のブロックもあるので、そのブロックを使って化学式を作ってみようなど。
理科や算数、5教科の内容に合わせて、ゲームで楽しく学んでいくという内容ですね。
あとは水曜日に今取り組んでいることがあるんです。
例えば消費者教育だったりとか、ここから社会を生き抜いていくために必要な力だったり、知識をつけるというような授業も、学校の指導要領も踏まえながら行っています。
ただ学習の対象年齢というところが小学生から中学生までいるので、誰でも飽きないようなクイズとかを取り入れつつ、それでもちょっといろんなことを学べるというような授業を意識しています。
―子どもたちが将来生きていく力を身につけられるようにという思いを感じました。
そこでの子どもたちの様子など、お聞かせいただけますか。
ゲームもそうなんですけれども、新しい学びの子どもたちの様子で言うと、canvaというサイトはご存知ですか?
ポスターを作成したり、パワーポイントのようにスライドを作ったりとか、最近だとYouTubeのサムネイルとかを作るのに使われているような編集ツールです。
そのcanvaを使った表現の授業を行っていまして、そこが一番子どもたちの自分らしさとか好きなことっていうのが発揮される時間になっています。
例えば、今日は自分の興味のあることを一枚のスライドに表してみようとか、間違い探しを作ってみようというような授業もあるんです。
子どもたちも自由に自分で素材を貼り付けて、自分で1枚のスライドにしていくという授業なんですね。
例えば、あまりみんなの前で話ができない子とか、チャットでのやり取りしかできないという子どもたちが、スライドでの表現を通して、自分らしさがとても出てくるということが多くあります。
「こんなセンス持ってたんだ」、「こういう雰囲気が好きなんだ」というのもあります。
また、そこで新しく子どもたちの好きなことを知ることができるというのが多くある授業だなと思っています。
そういうスライドを作るような授業は、学校でもパワーポイントの練習がもちろんあるとは思うんですけれども、自分を表現するということは意外となかったりするんですね。
他にも、クイズを作った時も作るだけじゃなくて、子どもたちにちょっとヒントを出してみるっていうような主体性も発揮している姿が今見られているかなと思います。
―自分らしさを表現し、それを周りに認めてもらえる体験というのは自信に大きくつながりそうですね。
こうした活動など、村上先生が特に大切だなと考えている力を教えてもらえますか。
そうですね。2つ、今考えていることがありまして、
まず1つは自分で選択をすることだと思っています。
自分から主体的に何か取り組むこともそうですし、人生は選択の連続だとは思うので、自分の持っている知識を使って、どっちを選択するかなどを自分で考えること。
その力が社会的に自立するっていうところだとは思うんですが、そういう力がすごく必要になってくるかなと思っています。
自分の興味を広げていくことで、知識があふれて選択肢の幅が広がるのかなとは思っています。
もう1つが、自分を認めること、自信を持つことはすごく重要になってくるかなと思っています。
卒業するときに、子どもたちが自分のことがすごく大好きって言えるような状態で卒業してほしいと願っています。
シンガクの中で過ごすときは「それいいね」とか、「めっちゃいいね」など、子どもたちを褒めること、認めることを大切にしています。
そういう経験を経て、自分にしっかり自信を持って進んでいくことがこれからは必要になってくる力かなと考えています。
―自分自身とは一生付き合っていくことになるので、自分を好きでいることというのは確かに大切だなあと共感しながらお聞きしました。
そして、そのためにはまず相手から認められることが大切なのですね。
本当に1日どれぐらい褒めようかと思うぐらいです。
シンガクにはすごく絵が上手な子とかも多くいます。
ですので私たち先生側から認めるだけではなく、同じ年代の子どもたち同士で「それすごい」とか「めっちゃ上手」とかっていう声が聞こえると、それも嬉しいだろうなと思っています。
そのため、みんなが好きなことなどを披露できる場というのは多く取り入れるようにしています。
―オンラインであっても、リアルと同じように、子どもたちが作品を通して自然とお互いを認め合うつながりが生まれているのですね。
そうですね。オンラインならではの良さというか、共有機能をすごく使うことが多いですね。
子どもたち自身がパソコンに入れている写真だったり、デジタルで描いた絵とかをすぐに共有しあったりしています。
ですので、みんなでが集まる朝の会とかお昼休みなどのちょっとした機会に「絵を描いたんですけど」みたいな感じで話し出してくれる子もいて、画面を共有しながらお話をしています。
それを他の子どもたちが見ながら「すごい」と認めている姿はよく見られますね。
―素敵なやり取りですね。
また新しく入ってくる生徒もいると思うのですが、そうした子はどんな風にその場に馴染んでいくのでしょうか。
新しい子が入るタイミングは月に2回で第1月曜日と第3月曜日と決めさせていただいています。
そのタイミングでは、私から軽くその子を紹介をして、最初は全体の雰囲気を見てもらうことが多いですね。
「いつもこんな風に進めてるよ」とか、他の子にも「最初はわからないと思うから、もし何かあったら教えてあげてね」っていう風に伝えています。
そしてもし参加できそうな活動があれば、少しずつ加わってもらいます。
例えばクイズの時間など、「チャットに打てそうだったら打ってみて」と声をかけてみて、チャットを打ちながら雰囲気を知ってもらうということもあります。
また、私とすでにいる生徒さんとのやりとりを見てもらうと「楽しそうだな」とか「何を言っても認められるんだ」ということを自然とわかってもらえているのかなと感じています。
そして、週1回個別の授業がありまして、まずはそこで先生と一対一で好きなことについてひたすら話すことも多かったりします。
そこで信頼関係ができていくとみんなの前でも少しずつ発言できたりということが多いですね。
―初めての環境はどの子も緊張すると思いますが、少しでも安心して過ごせるような配慮がとても丁寧にされていると感じました。
村上先生の中でも特にどんな点を意識されているのでしょうか。
そうですね、子どもたち一人ひとりの様子を見ながら、朝の挨拶の「おはようございます」と言ったときの声のトーンとか、声の声量とかちょっとしたコミュニケーションも気にかけています。
そこで、ちょっと機嫌がこの子は良くないなと感じることもありますが、そうした一人一人の様子を感じ取りながら、「今日はこういうふうにみんなを巻き込んでいこうかな」など、その日の子どもたちに合わせながら考えたりもしています。
―一人ひとりの子どもたちに合わせてサポートをすることは、オンライン、リアル関係なく大切なことなのですね。
また今後の活動についてもお聞かせください。HPを拝見すると、オンライン遠足などイベントも充実している印象を受けたのですが、今後取り組んでいきたい活動などはありますか?
そうですね、オンライン遠足もちょうど今企画をしているところでした。
今は2つ案があるのですが、1つは先生が現実のいろんな場所から中継をするみたいなことも楽しんでやってもらえるかなとも思っています。
バーチャル遠足みたいな形で子どもたちは家にいるままで、先生が「今日は京都のここから中継しています」みたいな形で、その場所の歴史だったりとか、その場所ならでは学びをしていく活動です。
あともう一つはですね、オンライン遠足ではなく、対面で会える場も欲しいという意見も出ています。
ですので、子どもたちと会場を決めて一回ここで集まってみようと、ハロウィンパーティーのようなものができるといいかなというのを今考えたりしています。
その場は、子どもたちの関わりの場でもあるのですが、保護者様同士の関わりの場にもなればと思っています。
オンラインフリースクールで一つ課題だと感じているのが保護者様同士のやり取りが生まれづらい点です。
例えば対面でやっている個別指導の塾だとお迎えのタイミングで保護者様同士が会ったりとか「最近どうですか」という会話が生まれることがあります。
しかし、オンラインだと保護者様同士のやり取りは生まれづらいところがあるので、「自分しかこの悩みを感じていないのかな」というのを不安に思われる保護者様がすごく多いということを感じています。
ですので、そういう対面で会う場というのを設けて、子どもたちの関わりもそうですし、保護者さん同士のつながりというのを作れるといいかなと今考えています。
―オンラインフリースクールという形ではありながらも、オンラインだけに縛られず、子どもたちの良い学びとなる機会を柔軟に考えているのですね。
また、保護者の方々へのサポートにも力を入れているのですね。
そうですね。不登校には子どもたちによって異なる事情があるように、保護者様の悩みもさまざまだということを感じています。
シンガクとしては保護者様にアドバイスをするとか、保護者様から子どもに何かをしてもらうだけではなく、手を取り合いながらお子さんにとって何が一番いいのか、保護者様にとっても何が一番いいのかということを考えながらサポートをしています。
シンガクに通う子どもたちは、興味のあることを人に話すのが大好きな子が多いんです。
最初はなかなか話せない子も、きっと無意識のところに誰かと話したいという思いがあると思うんですよね。
人見知りな子でも大人しい子でも、自分も話したいとか見てほしいという思いがあると思っています。
シンガクはそういう子どもたちを受け入れて認めながら、保護者の皆さんが今抱えている悩みを一緒に解決して、お子さんの変化を一緒に見ていけたらいいなと思っています。
そういうお子様の様子、成長を楽しみに相談に来てくれるのがいいのかなと思ってますので私たちもお伝えしていきたいと考えています。
―お子さんが自分の個性を安心して発揮できる場づくりだけではなく、そのプロセスをお子さん、保護者、そして先生と一緒に共有しながら歩んでいこうとする姿勢にとても共感できました。本日はありがとうございました。